2006年06月30日
幕末太陽傳
やってきました。金曜日です。しばらく休んでいた映画レビューを再開します。
よって、知床バイトの話はお休みです。
今回は以前のような微妙なタイトルではなく、名作をご用意です。
「幕末太陽傳」
1957年作
監督:川島雄三
主演:フランキー堺
顔ぶれは豪華です。石原裕次郎。小林旭。南田洋子。左幸子。岡田真澄もいます。あのマリオ面じゃない若い岡田真澄は新鮮です。
ストーリーは落語の「居残り左平次」を軸に、「品川心中」「三枚起請」「お見立て」に実際にあった高杉新作らによる御殿山焼き討ちを絡めています。
幕末の品川宿の女郎宿・相模屋に左平次(フランキー堺)が登楼する。左平次は金銭を持たずに豪遊し、代金を払えないのでそのまま宿に居残ることに決め込む。左平次は己の才覚と機転だけで、宿に起こるさまざまな出来事を丸く収めていく・・・
こんな調子でレビューをしていても全く伝わらないので、調子を変えていきます。
この映画、面白いです。サムライ映画史上で堂々の1位を死守し続けてます。サムライの映画好きは大変なもので、あらかた見尽くし、蔦谷に行っても借りるものがなくて帰ることしばしばです。
映画偏差値だとハーバード大で博士号を取れるくらいです。そのサムライ一押しなので間違いないです。(と思います。専門がホラー、西部劇なので当てにならないかも。。。)
落語を基にした物語ですが、落語の知識がなくても全然楽しめます。
相模屋の狭い空間で走り回る左平次の生き生きした演技。ぽんぽん飛び出す威勢の良い言葉。魅力的なサブキャラクターとサブストーリー。
物語は喜劇です。しかし、主人公に労咳という致死性の持病を持たせることで物語に深みと厚みを与えています。いつも笑顔を顔に張り付かせている左平次が、時折素に戻る時の表情。
最高です。
本当は内容にもどんどん入っていきたいのですが、これからこの映画を見る人の楽しみを奪う権利はサムライごときにはありません。
ですので、好きなシーンだけ御紹介。
「三枚起請」の場面です。相模屋の板頭・小春姉さんは3人の客に「年季が明けたら、あなたと夫婦になることを誓う」という起請文を書きました。
とある夜、偶然にもある親と子が相模屋で顔を合わせてしまいます。「これまでのことは勘弁してやるから、今日は家に帰りなさい。」という親に、道楽息子は「こんなものまでもらってるんです。」と差し出す起請文。あら、びっくり、父親のほうも同じ相手の起請文を持っていて・・・
親子は小春姉さんをとっちめようとします。どっちかと言うと、小春姉さんの暴れっぷりが二人をとっちめているようになってますが。小春姉さんの「あっちは女郎でござんすよ。因果家業でござんすよ。騙しますよって看板下げてこの商売しんじゃないか。」という啖呵がかっこいい。
左平次はもう1つの起請文を手に入れ、この修羅場の中に飛び込んでいきます。
「暫く!暫くお待ちよ!!」(たぶん歌舞伎の「暫」のパロディであると思いますが、サムライは歌舞伎に造詣が深くないため分かりません。)
左平次は起請文をもらった客の振りをして、包丁を持って暴れ、小春姉さんを殺す振りをします。画面奥では親子が暴れる左平次を止めようとしています。画面手前では左平次が小春姉さんに何かを耳打ちします。小春姉さんは「あー、わかった。」という表情をして、部屋から逃げ出します。
画面の構図の面白さ。起請文をもらった客の演技をしている、芝居っけたっぷりの左平次の演技。たまりません。
サムライはこの映画を20回は見てます。一時期は毎日の晩酌のつまみにしてました。台詞もほとんど覚えてます。もちろんDVDも持ってます。
断言します。
この映画を見てないということは、「人生の大切な110分」を無駄にしています。
この映画の機微は日本人にしか分からないと思います。
日本人に生まれてよかった、と本気で思います。
文句なしの100点満点です。
この映画を見るに当たって、知っとくと理解に役立つコトバを続きに書いときました。
サムライ、アジアで戦う。←をお気に入りに追加してみるのも一興かと

さっさと押しやがれ、戦争が終わっちまうぞ!!
ベトナム雑貨DANもよろしくお願いします。
記憶を頼りに書いてるんで、間違ってたらごめんなさい。調べる気力がないです。
品川宿
江戸で売春が公認されていたのは吉原だけです。ところが、公認はされなくとも、いろいろなところに売春宿がありました。とはいえ、最も料金が高く、格上であるのが吉原です。
一分
だいたい、現代の価値で1万円強くらいのようです。四分で一両です。
引きつけ
初めての登楼(初会)では、客と遊女が出会うための儀式をします。これが引き付けです。この時は遊女と寝ることはできません。遠いところで眺めながら酒を飲むだけです。二回目に登楼することを「裏を返す」。三回目でやっと「馴染」になり、褥を共にできます。吉原では客と遊女は擬似夫婦であり、一度馴染になってしまえば、他の遊女を買うことができません。浮気をしたことがばれれば、相応の手切れ金を払って離縁をするか、それができなければちょんまげを切られたそうです。当時の男にとって、髷を切られることは大変なことです。切られた残りの部分でうまく髷を結ってくれる髪結いどころもあったそうです。こんなまどろっこしい買い方をしなければいけないのは、相手が格の高い・太夫クラスの場合であり、初会でも遊女と寝ることができるお店はたくさんありました。とくに、宿場町では旅人が相手ですから、簡単な店がほとんどだったようです。
板頭
一番指名が多い遊女。
おちゃっぴき
お茶をひく。指名のないこと。
えり好み
遊女は自由恋愛で、相手を選ぶのが建前です。大きなお店では客のところに顔を出すだけで、その後一晩来ない「客を振る」ことも結構あったようです。落語なんかではよくネタにされてます。
三千世界の…
実際に高杉晋作が作った歌だと伝わってます。「三千世界のカラスを殺し、ぬしと朝寝がしてみたい。」 粋です。
付き馬
勘定を払えない客の家まで付いていき、客の勘定を取りに行く人のこと。
物日
絶対に客を取らなければいけない日。取れないと罰金があったといいます。その日には店の若い衆や付き人にご祝儀をしなければいけない。一年のうちに物日は頻繁にありました。
起請文
神様に誓う文章。反故にすれば罰が当たります。遊女はその職業柄、ある枚数までは保護にしてもばちが当たらないとされていました。詳しい枚数は忘れました。起請文は客の心を引きとどめておく為の技でした。他にも客の名前を刺青にして彫ったり、髪を切って渡したり、指を切ったり、爪をはいだりと結構大変です。
籐八拳
じゃんけんの一種。きつねが庄屋に勝ち。庄屋が鉄砲に勝ち。鉄砲が狐に勝ちます。
水府流
古式泳法。水泳の流派です。実はサムライは水府流の役を持ってます。
トラックバックURL
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
「幕末太陽傳」。日本人として110分を無駄にしないようにしたいと思っています。
私は、人生の大切な110分を無駄にしていました・・・
コレ、見たこと無いです。
110分を無駄にし続けないように、ツ●ヤで探したいと思います。
用語解説が特に!
めちゃ興味沸きました。
最近、映画不発続きなんで、見てみます!
見てない映画はいっぱいありますけど、
食指が動く映画がもうあまりないです。
老いてます。
VIVA日本。
人生は短い。
今すぐ蔦谷へ。
一度ではなく、二度三度見て
はまってみてください。VIVA日本。
日本映画は本当にいいものがあるんですけど、はずれに当たる確立が外国産よりある気がします。なんとなくな私見です。
幕末太陽傳サイコ〜。VIVA日本。
見てください。
映画界に神光臨です。もう、古いですけどね。白黒ですし。でもさいこー。
VIVA日本。
時代劇の映画は一切見たことがありませ
ん!!(断言)でもサムライ殿がそこま
で名作だというくらいですからよっぽど
いいんでしょうねぇ〜。
あたしも早速近所のGE●に行って探し
て見ます。
そいつは、サムライさんとは違ってゴダールとかカウリスマキとか、私にとってはハナクソの様な(わー、言っちゃった)映画が好きなヤツだったので、そいつが面白いと言っても興味が湧かず見た事ないのですが、サムライさんが面白いと言うなら見てみようかなぁ

ちなみに、チャンバラシーンは皆無です。
腕力はゼロ。脳力は10人前が主人公ですから。
レッツゴーG●O
告白します。
私もゴダールの「気狂いピエロ」だけは好きです。それ以外のゴダールはリアルクソですが。
「幕末太陽傳」はゴダールとは似ても似つかないのでご安心を。



