知床the世界遺産
2006年07月25日
終わりよければ・・・(世界遺産知床リゾートバイト1998エピローグ)
今までのお話はこちら
長雨の影響で、各地で水害が起こっています。
1998年もそうでした。土砂災害で寝台特急・北斗星の運行ルートが変わり、鉄ちゃん(鉄道マニアの方々)が少し喜んだりもした年です。一部の鉄ちゃん以外は覚えてないと思います。
インド人もびっくりな労働条件の下仕事に明け暮れた日々、よけいな労働時間を盾にサムライは交渉します。そして、2か月分の給料は貰いつつも、残りの10日間ほどを有給として扱わせ、早々と帰国することに成功しました。
厚い給料袋を手に、ホクホク顔で戻っていきます。
悲しみや感傷は全くありません。
後ろ髪も引かれません。
自由だ。自由の日々が戻ってきました。
そして、斜里駅まで戻ります。帰りは電車で帰ろうと思いました。なんとなく乗りたかった北斗星に乗ろうと思って、切符を買おうとします。駅員にその旨を伝えます。
「あんた、知らないの。土砂崩れで・・・途中の駅・・・テレビぐらい見ないと・・・常識でしょ・・・」
あまりの横柄な駅員の態度に、瞬間的にキレてしまい、何を言ってるのかわかりません。
「おんどりゃぁぁあ〜」
緑の窓口のガラスが揺れます。サムライはガラス越しに駅員を叩き続けます。ガラスを理解できない鳥みたいに滑稽だったことでしょう。あまりの剣幕に駅員も駅長も平謝りです。
あーあ、最後もこれか・・・・やれやれ。
よくわからないけど、北斗星は乗れるみたいです。長い旅路の末、札幌まできました。北斗星に乗れました。同部屋は若いカップルでした。夜の間、ひたすらにいちゃついてました。
居場所のないサムライは東京に着くまで、夜通しで食堂車(休憩車?)でお酒を飲んでました。寝台車の意味がありませんでした。
実家に戻って数日後、ホテルから「タラバガニ」が送られてきました。2.5キロのかなり大物です。ホテルからの感謝の気持ちだったのでしょう。
うれしかった。
チョト感動した。
箱を開けると、
カニは腐ってました。
大雨のせいで物流が滞ったのが原因です。
「おんどりゃぁぁ〜」
運送会社にクレームをつけました。
新しいカニが届きました。
カニの大きさが半分ぐらいに縮んでました。
ねえ、何なの?イジメ!?
2006年07月20日
大団円 (世界遺産知床リゾートバイト1998★最終回)
前回までのお話はこちらでまとめて読めたりもします。
かいつまんで言えば、知床にリゾートバイトに行ったら大変でした。なぜか支配人復帰まで代理をしてました、バイトのくせに。
そして、支配人が戻ってきました。。。
支配人が戻ってきたので、昼間に空き時間ができるようになりました。
ある日のこと、社長のお供を命じられました。車であちこちと連れまわされ、最終的には社長の自宅に到着しました。
ここは羅臼町。羅臼昆布で有名なところです。漁師町で海は間近です。質素な家々と至る所に吊るされた昆布。海鳥が飛び交っています。のどかなところです。こんなところで生きるのも悪くないなぁ、と少しだけ思いました。
古い家が立ち並ぶ中、一軒だけ真っ白な豪邸がありました。
社長の家でした。社長は元漁師。大きく当てた後にホテル経営に乗り出した人物です。たたき上げの苦労人です。ワンマン経営なのも納得できました。
自宅にお邪魔します。年のころ40歳ぐらいの婦人がお出迎えしてくれました。息子さんの嫁さんかしらと私は思いました。家族構成を聞いたことがなかったため、そのときの私には見当もつきませんでした。お出かけするところかもしれません。化粧も、服装もきれいに整えています。
白い磁器に入れられた紅茶と共に雑談にふけります。婦人も休止をした後は私たちのところから離れようとしません。
話は長く続きませんでした。沈黙が辺りを支配します。
突然、社長が口を開きました。
「これ、うちの三番目の娘だ。この年まで、そのう、行かず後家だ。」
私の目を見たままで社長は続けます。
「どうだ。娘と結婚して、ホテル継がないか?」
続きを読む2006年07月19日
バイトでマネージャー(世界遺産知床リゾートバイト第十一回)
バイトなのに支配人に任命されたサムライ
前回のお話はこちらですが、読んでなくてもあんまり差し支えないです。
そろそろ、ウソつきやがれ!ネタだろ!!
というツッコミがきそうなものですが、マジです。全て実話です。
サムライのバイト先のホテルは現存してました。今もあるかは分かりません。ホテル固有のホームページがないため、確認は取れてません。「宿泊者の感想」で2001年の記録までは探し当てることができました。社長は高齢で跡継ぎもなかったので、どうなっていることやら。。。
見目麗しい19歳のバイトが秘境の温泉宿で、支配人に昇格。ここに淡い恋と殺人事件でも絡ませれば、お目目ぱっちりのアニメ絵でコバルト文庫辺りでメガヒット・・・・・・このボケは既出でしたね。
支配人代理と言っても
・電話番
・宿泊者の把握、部屋割り
・金計算
・クレーム処理
・フロント業務
がプラスされただけです。だけって言うほど楽じゃないですけど。
バイト支配人の一日のスケジュール
5時 起床
8時まで調理補助
11時までフロント
15時まで事務室で宿泊者の整理、電話番
(12時ごろ、浴場の掃除)
18時までフロント
22時まで調理補助
23時まで事務室で残務処理
労働基準法ってなに?
山奥だから国内法が適用されないみたいです。
支配人が復帰するまでの10日間。
・・・・地獄でした。
ゲロ吐きながら皿を洗ってました。
この働きっぷりが社長の目にとまり、更なる展開です。
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2006年07月17日
いろんな人が・・・(世界遺産知床リゾートバイト1998第十回)
「ここは秘境の温泉宿。いろんな人がいて、いろんな人が来る。」
秘境の温泉宿でのリゾートバイト。さまざまな人に出会ったのです。
面白いお客さんに遭遇した、という予想がおおございましたが、そうではありません。
従業員がダントツに面白かったのでございます。
まずは軽いジャブから・・・
前に紹介した番頭さんも面白いお人でした。
「玉ねぎの形が面白い。」と何日もの間、思い出し笑いをする飯炊きばあさん・ちーちゃん。70歳。咳き込むぐらいに笑うので、そのうちに電池が切れて動かなくなるのではと心配したものです。
つづいて
Nさん御一家
50歳くらいのご夫婦と20代の息子が、住み込みで秘境の温泉にご奉公。怖いところの借金を踏み倒している(進行形)ようでした。
他にも「何かから逃げている系」のお人は数人いました。
一番のオモシロさんは
先生&アカネさんコンビです。
このお二人の男女、バイクで北海道中を旅していたのですが、お金がなくなってしまったのです。そして、当ホテルに押しかけ、
「お金がないけど、泊めて欲しい。代金は働いて返す。」
とのたまいました。「体で返す。」ですよ。
現代の話ですか?
ドラマか何かですか?
そうこうして、お二人はホテルで働くことになりました。
アカネさんは20代後半のそれはきれいな方でした。仕事もてきぱきと行い、笑顔を絶やさず、人当たりの良い方でした。
対照的に先生のほうは、年は同じくらいですが、ぼさぼさの長髪、アキバっぽいメガネ。もそもそとした口調。一言で言えば「汚いモサ男」でした。さらには監視していないと、すぐ仕事をさぼりやがるものでした。
その二人の関係が謎なものです。アカネさんはモサ男のことを「先生」と呼ぶのです。あだ名であるとか、そういう雰囲気ではありません。なにせアカネさんが先生と話すときは、全て敬語を使います。
不思議に思ってアカネさんに「何故先生と呼ぶのか」を問うてみたところ、「彼は私の先生よ。」と分かったのか分からないのかさっぱりな答えをもらったものでした。
先生があまりに使えなかったので、社長がクビを言い渡しました。アカネさんと共にいなくなってしまいました。アカネさんは早く見切りをつけて、幸せになって欲しいものです。
変わりまして、支配人の話です。当ホテルではあるジンクスがあります。
「支配人になって、1年間もった人はいない」
社長のワンマン手法と戦い、ある者はクビになり、ある者は体を壊し、ある者は怒り心頭で辞めてしまいます。
ある日のこと
最悪の予想が結果となりました。しばらく体調不良だった支配人が、胃潰瘍をわずらい入院してしまったのです。
そして、社長が私にこういいました。
「支配人をやってくれ。」
「バイトなのにホテルのマネージャーって何なの?嫌がらせ?」に続きます。
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2006年07月13日
ふきだまりのようなドヤ街に一人の男がやってきた。(世界遺産知床リゾートバイト第十回)
突然ですが
「湯けむりスナイパー」
という漫画をご存知でしょうか?
漫画サンデーにて連載していたものです。漫画サンデーです。少年サンデーではありません。目がきらきら輝いて恋愛とか友情とか語り合うような、あげなへたれ漫画雑誌ではありません。
漫画サンデーといえばオヤジ系漫画雑誌(オヤ漫)の最高峰の雑誌です。「静かなるドン」などを連載している雑誌です。
銃を捨て、秘境の温泉宿で余生を送らんと決意した
元・殺し屋がいた・・・
この設定だけでおなかがいっぱいです。
めちゃくちゃつぼに入りました。
主人公 自称・源さん(本名不詳)が場末の温泉宿で経験する人間模様が描かれてます。
ガンアクションは一切ありません。スナイパーの癖に。
「人生をやり直す勉強」と、静かに暮らす源さんの姿は涙なくして語れません。
各話読みきりなのですが、よく最後のコマで
源さんがつぶやきます。
「ここは秘境の温泉宿。いろんな人がいて、いろんな人が来る。」
そうなんですよ。知床バイト先のホテル、まさに場末の温泉宿。
いろんな人がいました・・・・。
来週に続きます。
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2006年07月12日
倒せ、熊。明日に向かって投げる魔球。(世界遺産知床リゾートバイト1998第九回)
前回のお話はこちら・・・熊のテリトリーに入らなければならなくなった、というお話でした。
深い森を抜けるため、番頭さんと私は装備を固めました。
手足を切らないために長袖長ズボン、足には登山靴、手にはマチェット(山刀)。熊除けのデカイ鈴。
この鈴がびっくりするくらいに大きな音を出します。これをつけている限り、熊とは遭遇しなくてもすみそうです。
40分ほど、けものみちをひた進みます。
やっと、目的地である川辺に着きました。そして作業を終え、休憩を取ります。そこで「熊の話」を番頭さんの口から耳にしたのです。
語り終えた番頭さんは用足しに向かい、姿が見えなくなります。
思いのほか長い時間が過ぎました。番頭さんは戻りません。
ざわざわと川の流れの音だけが響きます。
突然、森の奥で木々が揺れました。大きな、大きな揺れです。
その揺れは少しずつ近づいてきます。
あの話を聞いた直後です。番頭さんのいたずらだろうと思いました。
とはいえ、番頭さんも御年60すぎ。いたずらするようなお茶目な年でもありません。
その時、私は気付きました。ざわめきのする方角が、番頭さんの向かった方角ではないことに。
そして、鈴の音が聞こえないことに・・・・・
さらに揺れは近づいてきます。
森では木が生い茂っているうえ、手に高地があるため見通すことができません。
私はマチェットを左手に持ち替え、けん制用に川原の石を拾いました。
揺れはもう間近まで来ています。
右手に力が入ります。
ひときわ大きく、森が揺れました。
ひゅっ
石が飛びます。
がちんっ!
「いがっ!」
あれ?番頭さんの声がしました。
このお茶目なじいさん、サムライを驚かせるためだけに
熊よけの鈴を外し、
わざわざ遠回りをして木々を揺らしまわっていたようです。
番頭さんが以前に同じことを違うバイトの人にやったら、大変びっくりされたらしくて、味を占めたのです。
自分が同じことをされたら
光速の速さでお迎えが来てしまうジジイの癖に
いい度胸です。
人類のために
このジジイを川原に埋めてやろう
と思いました。
ちょうど人目もないし。
でも、新聞に載るの嫌だし、
大人気ないので見逃してやる。
長生きしろよ、ジジイ。
なお、サムライの魔球は
見事に番頭さんの大腿部に命中。
番頭さんは暫く足を引きずってました。
「熊のいる森では熊よけの鈴をつけましょう」という教訓のお話でした。
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2006年07月11日
やつはどこにでもいる。(世界遺産知床リゾートバイト1998第八回)
前回のお話はこちら。熊は怖いというお話でした。
サムライが働いていたホテルは山の中にあります。
冗談抜きに山の中です。
山の中腹にあるのですが、他にもう一軒のホテルが山の上のほうにあったそうです。廃業しました。今では熊の住処だそうです。
くまですよ。くま。本州にいるツキノワグマとか申すへなちょこでなく、エゾヒグマです。体長2メートルオーバー、体重200キロオーバーです。即死級のパンチ力。
馬場+小錦+マイク・タイソンです。やつに勝てる人類は「マス・オーヤマ(大山倍達)」ぐらいのものです。
そんな奴と同じ山の下で過ごしてます。
ホテル近くに出没することもあります。
現に料理長の奥さんが熊に遭遇し、辺りが騒然としたこともあります。その時は幸いに、川を挟んで相対したため事なきをえました。
その次の日です。
ホテルは川から水を引いているのですが、その水門の調整のため番頭さんと二人で川まで行くことになりました。
川に行くまでには40分ほどの道のりを徒歩で行かなければなりません。
熊の森を抜けて・・・
まだまだひっぱります。。。
次回:@熊、急襲:戦えトルネード投法の巻
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2006年07月10日
恐怖・熊のお話 (世界遺産知床リゾートバイト1998第7回)
読まなくても全く問題ありませんが
前回までのお話はまとめてこちらで読めたりもします。
数年前の夏のことなんすけどねぇ。若い大学生のグループが山の中でキャンプをしたんですよ。7人グループでした。男の子も女の子も混じって、それは楽しそうでした。キャンプですから、お決まりのバーベキューをして、お酒を飲んで盛り上がってました。
山の中ですからねぇ。いくら騒いでも気兼ねすることありません。だからお酒も飲みすぎてしまいました。テントもいくつか用意していたんですけど、酔いつぶれて外で寝ちゃってる人もいます。
ある男の子は泥酔するほどでなかったから、みんなを心配してテントに入れてあげようとしたんですけど、あんまり起きないもんだから、めんどくさくてそのままにしちゃったの。
男の子は虫が嫌だったから、テントに入ってぴっちり扉を閉めました。そして、酔いも手伝ってぐっすりと眠っちゃいました。
外が薄暗い時分です。虫の知らせというんですかね〜。男の子が目を覚ましたんですよ。
何かいるんですよ、テントの外に。
男の子は怖くて怖くて、ぶるぶる震えてました。
いきなり、
どんどんどんどん、
すさまじい音がしてテントが揺れました。
外で何かが暴れてるんですよ。何かが。
男の子はあわてて、テントから逃げ出してね。近くにあった木に登ったの。
その何かは木下にずーっといるんですよぉ。まだ暗いから分からないんですけど、下のほうからずーっと音がしているんです。
男の子は怖くて、夜が完全に明けるのを待ってたんです。
だんだんと日が差し込んできます。そして気付いてしまいました。
好きなオチを反転してみてください
オチ1
テントの周りにあったのは、食い散らかされた仲間の死体だったんです。
男の子が発見されたときには、彼は木の上で発狂してました・・・・
オチ2
はげしい男女の営みが繰り広げられてることに。
以上、知床で聞いた都市伝説「熊の話」を稲川淳二風にアレンジです。落ちはどちらでも良いそうです。
そして熊話が次回に続きます。
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2006年07月06日
かに かに かに(知床リゾートバイト世界遺産以前1998第六回)
知床リゾートバイトの日々の続きです。・・・前回のお話
今日はかにです。
かにです。ヤッホー!!かに、ヤッホー!!
サムライは無類のかに好きです。
汁がいっぱいの甘い身、
ほろ苦いかに味噌、
豪快にムシャぶるのも大好きだし、
爪の先の取り難いところをせせるのも楽しみ。
かに、かに、かに、かに
何故こんなにも心を躍らせるんでしょう?
かになんて、見た目は虫でしょ。
足いっぱいあるし。
ごめんなさい。でも おいしいの。
いつもあわあわ。
そんな君が素敵、かにさん。
野にいる段階で
「調理する器つき」のかにさん。
火にくべるだけで大丈夫。
生まれ変わっても、
一緒に生きたいです、
かにさん。
こんな電波を垂れ流してないで、本題です。
ホテルのまかないの夕食、
毎食かになんですよ!!
毎食、かに!!王侯貴族なんて目じゃないです。
ルイ14世より恵まれています。
いくら北海道でも「かに」は高級食材です。一介のバイトに毎食食わせられるものではないのです。
この待遇の良さ。そのうちに
「社長の愛人の殺害を命じられる」
んじゃないかな、とどきどきでした。
答えが知れたのは数日後。
・・・・・・・・・客の食い残しでした。
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2006年07月04日
牡蠣懺悔 (世界遺産知床リゾートバイト1998第五回)
知床のホテルにて調理補助のバイトをしていたサムライ・・・・前回のお話
突然ですが、「牡蠣」の殻を開けられますか?
割烹着姿で廊下を歩いていると、お客さんから声をかけられました。
「外で牡蠣を買ってきたんですけど、開けてもらえますか。」
「はいはい、お安い御用です。」と答えるサムライ、牡蠣開けたことありません。
どうせ、料理長に頼めばよいので、二つ返事でOKです。
「料理長〜。りょうりちょう〜。」
「料理長、パチンコに出かけたよ。」と答えてくれたのは番頭さん。
「番頭さん、牡蠣の殻、開けられます?」
「いや、わかんね。社長ならできんだろ、元漁師だし。」
「社長。しゃちょう〜。牡蠣開けてもらえます。」
「かしてみい。ほれ、ガキッガッキ。」
いつまでたっても開きません。社長は御年70過ぎ、ドリフのコント並みに手が震えていて、開けられないようです。
2度3度、ナイフが勢いよく空を切ります。牡蠣を開ける前に、指が2、3本なくなりそうなので、お断りしました。
自分でやるしかない。
サムライvs牡蠣。
牡蠣の野郎が全精力を傾けて口を閉じてます。生死の戦いですから、さもありなんですけど。うざい。ナイフの刃すら入りません。開けるコツがあるんでしょうけど、そげなものは知りません。プロのマウンドに出された草野球のピッチャーみたいなものです。ボールが届けば(口が開けば)御の字です。
サムライは叩き壊しました。
やっと出てきた牡蠣は、殻の粉末まみれです。
牡蠣は風味が抜けるので、洗わないほうが良いそうです。
洗うなら、大根の絞り汁か塩水を使ってさっと洗うそうです。
そんなことは知りません。豪快に水道水で洗いました。落っことしました。あわてて拾いました。味がなくなっているだろうと思い、ほんのり塩をかけときました。
残った部分の殻も無残な形だったので、包丁とはさみで形を整え、一番高価な皿に大根のつまとレモンを添えて、殻をセットです。
そこにでろでろになった牡蠣を乗せて、
殻付き牡蠣のような何かの完成です。
お客さんにそれを出した後、
サムライは早々と布団にもぐりこみました。
何があっても、
知らない振りをしていようと心に決めました。
あの時の方、ごめんなさい。
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